しとやかな獣 (1962) 監督 川島雄三







ストーリー「映画データベース all cinema」




「しとやかな けだもの」大傑作。知らなかった驚愕しましたこんな凄い映画があったなんて。

川島雄三監督作品を続けます。 まったく予習せず ↓ のチラシの写真と情報しかなかったし、この映画で見事な怪演技をする伊藤雄之助さんについて書かれた本を一年ほど前に読んでいたことを忘れてて、あっこれか!と。 とてもポスターから、この映画が持つ、孕む、特異でリアルな世界観を垣間みることは絶対に無理。だって若尾文子がヒロインだという類いだけの映画ではないと思う。群像劇だし。












とある団地が舞台。伊藤雄之助(当時43歳もっと老け役)と山岡久乃(当時36歳なのに永遠の老け役主婦)の夫婦が、せっせと部屋の模様替えをするシーンがタイトルバック。能楽がBGMに流れるなか二人は飾っていた油絵やテレビなどの高級品を隣の部屋に運んで居間を貧相に見せ、さらに汚れた着物に着替えてまでして来客を待ちます。そこへやってきたのは夫婦の息子が勤める芸能プロダクション社長・高松英郎(当時33歳・永遠の短髪ギョロ目)と経理担当・若尾文子(当時29歳)と謎の金髪ジャズシンガー・ピノサクこと小沢昭一(当時33歳)。高松英郎とピノサク、かんかんに怒って夫婦に詰め寄ります「カネを返せ!」と。






そのシーン。左から高松、ピノサク(笑)、若尾、山岡、伊藤







実は夫婦の息子(集金担当)が、ピノサクのギャラも含め大量の取引の金銭を横領していたというのです。さあここで伊藤&山岡の夫婦は、実に見事にのらりくらりと高松らを煙に巻くようにシラを切ります。「うちの息子に限ってそんな」「帰って来たら問い正しておきますが」「私たちはこのように貧乏ですので」。若尾文子ここではひと言も喋らず、高松とピノサク逆上しつつ団地をあとにします。






息子・川畑愛光(中央)







そんな一部始終を覗き見していた(本来ならバカ)息子が遅れて笑いながら帰ってきます。夫婦、別に咎めることなく、ただ思っていたより金額が大きいことでそのカネはどこへ行ったか?気にしながら部屋を元通りにして、高級酒やメロンなど食べ始めます。

そこへ派手派手、銀座のホステスみたいな娘・浜田ゆう子が帰ってきます。彼女はなんと父・伊藤雄之助の指南で有名作家・山茶花 究 (さざんか・きゅう 当時48歳)の2号さんを勤めておりましたが、それをダシに、度重なる借金を父・伊藤がしていたこと(だって一銭も返さないので)が原因で縁を切られたとのこと。













伊藤、すかさず娘に聞きます。「作家さんとの別れ際はどうだった?」「そうか、ならまだ未練があるはず」と、案の定、作家・山茶花がやってきたので歓待し、但し娘は隠してじらしてさらに借金を迫ります。

・・・伝わったかな?・・・そう、家族全員筋金入りのペテン師だったのです。映画前半は徹底的にこの狂った家族(狂っていることが当たり前で生きている罪悪感の無さが怖い)を描きます。

そして中盤以降、彼らのさらに上を行く女がいたことで物語は急展開。ラストに向けての疾走感に痺れます。
その女こそ、若尾文子。











実は息子は、経理の若尾文子とグルで横領したカネの一部を両親に渡し(これで伊藤&山岡は肥え)残りの大半を若尾文子に貢ぎ、若尾はそのカネで旅館を建て独り立ちしようとしていたのでした。そして若尾は念願の旅館が建ったので、会社を辞め息子とも縁を切ろうとして、さらに若尾は他にも複数の男たちを手玉に取っていたことが発覚し・・・。











・・・ストーリーを追うのはこれくらいにしておきます。最高に面白いです。未見の方は是非、動画配信なりDVDなりで観賞を。

数年前、角川シネマで開催された「若尾文子映画祭」で挨拶に立った若尾さんの記事→ 若尾文子映画祭再び、「しとやかな獣」は「一番難しかった、ちょっと変わった映画」 から、若尾さんのコメントを引用しておきます。



 中でも、川島雄三監督の「しとやかな獣」は、「160本の映画に出ていますけれど、一番難しかった。自分らしくない役で、どうしていいか分からないところが随分あった。良くなかった気がするんですよね」という。それでも、「川島監督はとても自由にやらせてくださる方。ちょっと変わった映画でしょ。でも色気のある面白い映画」と振り返った。


そう。観ていて感じたぎこちなさが、逆に映画の世界観にマッチしていたように思います。若い、この作品を含めて数本のキャリアしかない相手役・川畑愛光の激情単純芝居を、うまく受け取れないまま演じていた感じにも見受けられました。











↑ 妻役の山岡久乃も最高。伊藤との夫婦の演じ方が、コメディではなくメソッド演技として響きあっているからこその傑作です。さらに言うなら全編に渡ってとにかく早口でまくしたてる台詞。脚本は社会派的な作品の印象が強い(この作品も実は含みがたくさんある)新藤兼人によるもの。これありき。素晴らしすぎて言葉を失います。







新藤兼人―人としなりお







長廻しで舞台的だなと思ってたら、案の定舞台化もされておりました。最近ではケラさん演出で。その時の記事も載せておきます。→ KERA、若尾文子主演「しとやかな獣」の魅力は「団地」「会話のテンポ」 


演出も脚本も撮影もセットも素晴らしい。そして伊藤雄之助の存在、演技力がこの映画を特別なものにしていると思います(もちろん山岡久乃らとのアンサンブルありきですが)。 ↓ に書かれていましたが、例えばヤクザ映画の悪役と言えば・・・みたくカテゴリライズすると何人かの役者が(つまり取り替えがきく)頭に思い浮かびますが、伊藤雄之助はまったく取り替えが利かない脇役であるということ。狡賢くて卑屈な、それでいてジェントルでもあり。冒頭の数十分の芝居はたまりません!










↓ 伊藤雄之助さんへの洞察、素晴らしいです!


昭和怪優伝 帰ってきた昭和脇役名画館 (中公文庫) [ 鹿島茂 ]







川島雄三と若尾文子の3作品、全部観ました。

「女は二度生まれる (1961) 」

「雁の寺 (1962) 」


そしてこれ。

でこの3作品の4Kデジタル版を2017年末にNYで公開したときの記事。予告編付き→ 4Kで蘇った川島雄三監督×若尾文子の世界-『女は二度生まれる』『雁の寺』『しとやかな獣』-ワールドプレミアのNY上映予告!





死ぬまでに、是非の観賞を!







2018年 1月5日
角川シネマにて観賞




<2018年 3月末・追記> あまりに面白かったので、きっと同年を代表する「年鑑シナリオ」に選ばれていると思い込み図書館に行きましたが、確かにこの年、新藤兼人脚本作品は選出されていましたが、これではなく別の脚本・監督作が掲載されていて。で、この傑作の脚本を是非読みたいと思っていたある日、JR新橋駅前で時折開催されるわりとマニアックな古本市でこんなのを発見!!!




昭和34年3月発行「キネマ旬報(別冊)」”未発表秘蔵シナリオ集”という企画に「しとやかな獣」のシナリオが掲載されておりました。つまり、映画公開の3年前に新藤兼人さん書いていて、秘蔵にしていたということ・・・。うわあ〜早速読破させて戴きました。 はい、ほぼ、映画化された原型に近いです。これ ↓ タブレットかスマホで拡大して読めば分かりますが、新藤さん的には珍しく「第一稿」という感覚で、あえて舞台的に書いたとのこと。映画版とあえて違いを見つければ、先に書いた通り「時代感覚」を舞台や効果音(空を往く米軍機)などを挿入することくらいで表現したことかなと。




さてさて、ケラさんが舞台化したり、多くのクリエイターがこの作品に興味を持っていることを知っています。そのまさに原型となるシナリオを偶然ですがこうして手に入れました。なのでもし、この「しとやかな獣」に興味を持ち、その構造などを研究したいとか考えている人がいれば、是非、この「キネマ旬報・別冊」のコピーをおわけしますので遠慮なく、連絡を下さい。 私のもうひとつのwebサイト「森田空海」内にgmailアドレス、またはFacebookアドレスを出しておりますので、そこから連絡を頂ければと。より多くの方々にこの映画の素晴らしさが伝わればと念じて止みません。







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