からっ風野郎 (1960) 監督 増村保造





ストーリー Movie Walker



面白い。

こんなに長い時間、動いている喋っている生きている三島由紀夫を観たのは生まれて初めて。なにせ公開当時に私生まれていませんし、自決された1970年でも5歳だったので。そしてこんなに躍動感があり、茶目っ気があり、真摯な男だったのだろうということに深く感心しました。きっと多くの人に愛された人物だったんだなと。

どうして自決したのか?その思想的なことなどまったく知らないので三島由紀夫について論じるつもりはない。ただ、この大映映画、娯楽作品に「主演俳優」として出ていたという事実をまったく知らなかったので、先入観なく、ほんと楽しめました。











どのレビューを読んでも三島由紀夫の演技は「大根」と(笑)。でもでもまあ確かにそうなんですが、愛すべき感じで良かったです。確かに共演者、特に若尾文子と船越英二がいつも以上に(なんて言うと叱られそうですが)しっかりと脇を固めていたように見えたので、主役である三島の見え方も、脇に絡められて存在価値を見いだしたような。












そもそも当時すでに文豪として著名な三島由紀夫を、映画に主演させる(これ以前に1本だけチョイ役の出演があったらしい)ことになったのか?製作前、撮影時、公開後のエピソードも含めて→ からっ風野郎 Wikipedia にとても詳しくまとめられているので興味がある方は是非一読を。 これによると本人も「しでかした」みたいなコメントを残していて愉しい。劇場に当時の映画批評が貼られてました。当時の空気感が伝わってくるようで面白い ↓












武道館・靖国神社至近の九段会館で開かれた完成披露試写会にて三島由紀夫は、文学の中では決して人前に出さない自身のなかにある滑稽さ・哀れさ・臆病さなどの秘密が、映画によって白日の下に晒されたと告白しています。今後これほどまでに「弱み」を見せることは絶対にないと。つまり、本人自ら達成できると思っていた俳優という仕事への敗北宣言です。 ↑ 批評家はそれに続けます。「映写中に客席から洩れるクスクス笑いは、直接間接に彼を知る人たちが予想外な違和感をうけている証拠」と。












これを手厳しい批評とは考えません。当時を知らない自分が言うのも何ですが、映画芸術の役者の世界に、実は似て非なるだった(を、知らなかった?)部外者が参入したわけですし、結果が結果なので当然でしょう。でも2018年の今、私は存分に楽しめました。Youtube には本編も予告編もあがってますが(画質が悪いのでおすすめしませんが)予告編をリンクしておきます。




「からっ風野郎」予告編 Youtube



↑ これで見るとやっぱり三島由紀夫の台詞廻し「大根」す。でも90分間流れで見てるとなかなかイケてるやん、魅力的な役者さんだと思いました。でも先に紹介した からっ風野郎 Wikipedia  によれば、監督の増村保造(三島とは東京大学法学部同級生)による徹底的なダメだし、リテイクの嵐、しかも若尾文子やスタッフさえドン引きするような罵詈雑言が現場では飛び交い。でも三島由紀夫は、ノーベル文学賞に推挙されるほどの作家たる三島由紀夫は、それでも折れずに現場に挑んだというのが凄い。監督と主演の表現ということの執念。「餅は餅屋」を越えて挑んだ情熱みたいなものが、58年の時を経て今、渋谷の劇場に降臨したのかな?なんて感じました。







「三島由紀夫」とはなにものだったのか (新潮文庫)








次に役者として再び出るのは6年後、1966年「憂国」(原作・監督ほか出演)切腹シーンが有名なカルトな短編(28分)。そしてここでも紹介した 「黒蜥蜴(1968)」監督 深作欣二 (原作・出演)では台詞なし、肉体美見せつけ剥製(笑)にされ、美輪明宏に接吻される名場面。その翌年の「人斬り」(原作・出演)が役者として最後。五社英雄がメガホンをとった勝新太郎主演のこの映画でも切腹シーンを演じ、公開からおよそ1年3ヶ月後、実際に自ら腹を切ったことになります。繰り返しになりますが、どうして?はここでは考えず、この映画「からっ風野郎」はだからこそ、軽いノリの娯楽作品に体を張った体当たりした三島由紀夫が観られる、超を付けても良い貴重な一本だと言えます。DVDも出てますので是非の観賞をおススメします!






↓ タイトルバックにクレジットされてましたが、残念ながら映画本編では使われていません。幻の主題歌。販売はされたはず。








本人が大けがをしたラストシーンは、エスカレーターに倒れ込み頭部を強打、出血したこと。手術・退院後撮り直したそうですがこのシーン、観ていて1993年公開のアメリカ映画「カリートの道」を思い出しました。ブライアン・デ・パルマ監督、アル・パチーノ主演。パチーノがやくざから足を洗って女と南の島へ行こうと、待ち合わせの駅へ向かうところを狙われて・・・そっくりな展開です。ラストシーン、三島由紀夫迫真の演技!繰り返そう、必見です!






↓ 公開当時はまりました。名作です。


カリートの道 [Blu-ray]









2018年 2月21日
シネマヴェーラ渋谷 ”シネマヴェーラ的 大映男優祭” にて観賞







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