点と線 (1958) 監督 小林恒夫






ストーリー&レビュー「映画データベース all cinema」




作家・水上勉(みなかみ・つとむ)は言う。「松本清張は推理小説の世界においてブルドーザーで荒野を開墾し、作物を植えられる土壌を作った人だ」と。うまいこと言います、ほんとまさに彼こそ日本推理小説界の基盤たる存在であり、以降に続く文学界の旗頭であるということです。すでに紹介した 「張込み (1958)」 監督 野村芳太郎 が公開されたのが昭和33年1月、そしてこの「点と線」が同じ年の11月。しかも前年「顔」の映画化から始まった原作・松本清張映画は(わずかこの1年あまりで)6本目。さらに映画化作品は続いていくのですがこの「点と線」、列車の時刻表を使ったトリックという斬新さ、バラバラの「点=事実=駅」と「線=論理=路線」が組み合わさって行くサスペンス。清張小説を語る時に必ず触れられる1本です。







蒸気機関車〜栃木で走ってるって〜!


JTB時刻表2018年4月号








北九州の国鉄と西鉄の二つの「香椎(かしい)」駅。そこから寂しい道をしばらく行った海岸線で発見された男女の死体。死因は青酸カリ。鑑識の結果心中死体として処理されるところ、疑問に感じた老刑事・加藤 嘉(かとう・よし 当時45歳)と、死んだ男性がある汚職にからむ人物だったことに疑念を感じた東京・警視庁の刑事・南 廣(みなみ・ひろし:当時30歳・初主演作)が執念の捜査を繰り広げる物語。死んだ二人に深い関係が無かったことを知った南 廣は、二人が別々に香椎に来て殺されたと推理。しかし死んだ女の同僚が、東京駅を出発する二人の姿をホーム越しに目撃していたことが判明。東京駅といえば、ラッシュアワーの連続でホームが見渡せるタイミングなどほとんどない。しかし時刻表を見るとわずか4分間だが、13番線のホームから他の列車に遮られることなく、西日本へ向かう15番線のホームが見渡せる時間が存在した。この僅かな目撃情報がネックとなって捜査は行き詰まるというもの。






小津安二郎監督曰く「人間を描けば、社会がでてくる」。松本清張さんもきっと「今」を描くことで、結果的に「昭和」という時代を炙り出していたことになるのでしょう。


松本清張スペシャル 2018年3月 (100分 de 名著)








推理モノなのでネタバレはこれくらいにしておきます。さて映画としてどうだったか・・・ちょっとしんどかった・・・脚本と演出のバランス?いや確かに言えるのは、「できる」役者と「できない」役者のアンバランスか。主役に抜擢されたのはデビュー間もない南 廣。この人、常にキリッとした顔、ズバリ刑事顔してて、そこに例えば「この男が犯人に違いない!絶対に追い詰めてやる!」みたいなベタな台詞が心の声で乗っかってくるので分かり易すぎてチカラ入りすぎてて観てて疲れた(笑)。






ザ・刑事顔。







南の上司には名作「生きる」ほか黒澤組常連の志村喬(当時53歳)。追い詰められる容疑者に山形勲(当時43歳)と高峰三枝子(当時40歳)夫妻。「できる」役者と「できない」役者のアンバランスというのはまさにそうゆうことで、南の相棒刑事役に河野秋武(当時47歳)がいてフォローしますが、つまり南 廣が出てくるシーンと、脇役たちが芝居をするシーンのレベルの差が歴然すぎてアンバランスに感じたということ。ただし物語の構成は確かで見応えありました。ただインターネットが当然の現代から見ると、捜査や推理に信じられないくらい手間ヒマかけてしまうことに、今の若者たちが見ればどう感じるのだろうか?なんて思いました。






そんなことを思いながらふと古本屋でこれ見つけ ↓ 


テレビドラマ代表作選集〈2008年版〉








2008年にテレビ朝日でドラマ化されたシナリオを発見。南 廣が演じた刑事を高橋克典、加藤嘉が演じた九州の老刑事をビートたけしが、脚本・竹山洋によるこのドラマは芸術祭大賞を受賞したそうで、思わず購入して読んでみました。・・・・凄い! 昭和33年の映画版を観たばかりだというのに、まるで新しい作品を脳内で観賞しているような感覚。二部構成、計5時間に及ぶドラマに脚色した竹山洋(映画「ホタル」「四十七人の刺客」など)は凄い!一部のラスト、捜査打ち切りに憤ったビートたけしが「仕方がない」と諦める高橋克典を殴るシーンに嗚咽しました。また、ドラマ版はより「戦争」を生き抜いてきた男たちのバックボーンが鮮明で、生き抜いたからこその悪と正義のせめぎ合いが面白い。ドラマ版、いつか観賞します。








ビートたけし×松本清張 点と線 [DVD]








いくら正義を追求しても、同じくらい、いやそれ以上に命を賭けて守ろうとする「悪」。悪の側からすればそれが「正義」なわけで追求される正義が悪になるわけで。観ていてムカムカするのだけれど、そこに人間の「業」が隠されている気がするので目が離せないというか。さて、汚職にからむ映画を立て続けに観たので続けてみようと思います。


















2018年 3月1日
ラピュタ阿佐ヶ谷 ”石上三登志スクラップブック刊行記念 ミステリ劇場へようこそ” にて観賞








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