悪い奴ほどよく眠る (1960) 監督 黒澤明






ストーリーほか作品情報: wikipedia

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「汚職モノ」続けます。これ大傑作です。最高です。必見です。世界に冠たる黒澤明もこの時代、ゆえに製作費がかかりすぎるとのことで東宝から独立させられて作った、黒澤プロ第一弾の映画作品だったそうです。

↑ この昭和なレタリング最高♡ですが、シネスコ画面いっぱいいっぱいにそのタイトルが出たあと、クレジットされる脚本家:小国英雄・久板英二郎・黒澤明・菊島隆三・橋本忍・・・絶句というかこれだけで息を飲みます。黒澤映画に限らず日本映画界の名作をものしてきた錚々たる顔ぶれがずらり。面白くないわけなんて絶対なし!でもって冒頭、三船敏郎(当時40歳)と香川京子(当時29歳)の豪勢な結婚披露宴を延々と見せる描写なんて、のちの米映画「ゴッドファーザー」や「ディア・ハンター」の先駆け。そして何やら怪しいサスペンスがとっくに始まっていて、私たちはスクリーンに釘付けにさせられてしまうのでした。151分、ちっとも長くない、最高の映画体験ができます。














興行成績はあまり良くなかったそうです。なので黒澤は次に 「用心棒 (1961)」 そして「椿三十郎 (1962)」と続け、意識的に娯楽色を加えたと言われています。だからこの「悪い奴ほどよく眠る」はその一歩手前なので、結構ドライというかエッジが利いたハードボイルドな面もあって、なんか初めてブラックコーヒーの苦さを感じたときのような?初めてサッポロビール黒ラベルの旨さを知ったときのような?(笑)おどろき発見新鮮さ、とても携帯もインターネットもない60年近くも前のお話とは思えない。






中央:三船敏郎 手前:森雅之(当時49歳)






とにかく役者が良い。端役に至るまでちゃんと味のある芝居ができる面子が揃ってる。さらに主役のミフネはじめ大御所もスタアぶらない、子憎たらしいほど「役」を生きている。個人的に役者バカを尊敬して「キチガイ」と呼んでいるのですが、まさにそう。キチガイが結集した傑作。眼鏡をかけていつもの眼力を抑えスマートに演じる三船敏郎の存在感、対する悪役に老けメイクの森雅之がこれまた凄い。 「カモとねぎ (1968) 」監督 谷口千吉 でも書きましたがこの人本当に「役」を生きることが出来る役者なので、メイクして作った感じがまったくしない。マイホームでは可愛いお嬢様の香川京子にあ〜んして食べさせて、ビジネスでは冷徹非情にラストなんてそんな娘に対してさえ自分の立場優先だし。おおお恐ろしい、最高に怖い面白い。






時代は昭和35年。空襲で瓦礫になった工場跡などが残ってて、ロケで生かされてました。









古い日本映画を観ていると「戦争」の影が、それを全面に出してこなくても確かにあるのが分かり、当時はそれが作る側、観る側ともに共通の体験としてあったわけで。ある種残念なのは現代の私たちはそれを想像でおぎなうしかなく。この映画でも主人公の三船敏郎とその盟友・加藤武(当時31歳)が焼け跡のアジトで、戦後の裸一貫から生き抜いてきた過去を懐かしむシーンがじわり胸に沁みました。それを実際に当時残っている焼け跡、瓦礫の場所で撮影しているものだから説得力ハンパなく。そこで復讐に生きる男たちと、恐らく戦中・戦後もずる賢く生きてきた役人たちとの対比が描かれて、同じ「戦争」をどう生きたか?がストーリーの裏側・登場人物の根底にきちんと流れているようで、深い。






右:加藤武(1929-2015)写真は金田一耕助シリーズより。




↑ 「よし!分かった!」が口癖でちょっと抜けている感じの役柄で有名な加藤さんが、この映画のラストで見せる「慟哭」の芝居は強烈です。こんな加藤さんがあったなんて、鳥肌立ちました。








三船敏郎の復讐劇です。到底叶うわけない巨悪に挑み、観ているこちらまでわくわくさせてハラハラさせて・・・ああとても書けない、ネタバレしたくない。こんな骨太でユニークで、恐ろしくてもの凄い日本映画があったなんて、恐れ入りました、黒澤明ってやっぱ本物です。何がどれほど凄いのかくどくど書きません、あなたの眼で是非!













2018年 3月23日
池袋・新文芸坐 ”女優人生70年企画 香川京子映画祭” にて観賞






最後にもうひとつ、三船敏郎と香川京子が演じるキスシーンは、そのキスに至る理由、前後の芝居、アングル、役者のフォルム(見え方)すべてが完璧、脳裏に焼き付きました。このシーンだけでも永遠に語り継ぐべき傑作です。やっぱクロサワ、もし観ないとか知らずに終わらせるのなら、あなた自身の生きる意味も価値も減じると断じておきますから。良いですか?絶対に、観なさい!













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こんなのも。


黒澤明 59の言葉 (NOAH’S BOOKS)







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