赤ひげ (1965) 監督 黒澤明





優秀なレビュー

『赤ひげ』(1965)黒澤明、最後のモノクロ作品にして最高傑作。


劇場に張り出されていた、草壁久四郎氏による当時の映画評(2ページ)。








さらに黒澤明を続けます。そしてこうして紹介できること、この映画が公開された年の1月に生まれた私が、今になってやっと観ることができたこと、観賞後の余韻にひたりいくつものシーンを心に思い浮かべて、感慨にふけっております。感謝です。もはやどうして今まで観なかったのだろう?知らなかったのだろう?と自分を責めるまいと。私にとっては53歳になって観るべき、さだめだったのではないかと。

すでに黒澤明はこの時点でレジェンドです。「羅生門」「七人の侍」「生きる」「用心棒」 「椿三十郎」も「天国と地獄」もすでに世に送り出し、しかし時代は日本映画衰退、斜陽に向かっていたと言います。なので ↓ こんなことを宣言してから、この「赤ひげ」に取りかかったそうです。










すでに何度も”ギリギリ”を絞り出してきたはずの、”ザ・クロサワ”が、映画の可能性をさらに押し広げんと葛藤する。これで傑作ができないわけがない。スタッフ・キャストすべてが一丸になって追求に追求を重ねたに違いない。そしてその結果が完璧なまでにスクリーンに焼き付けられている。有無を言わせないほどの完成度の高さ。画面の隅から隅まで、眼と心が行き届いた設計・空間。完璧です。






↓ そんな黒澤明が何を選んだのか?気になる。


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三船敏郎(当時45歳)演じる赤ひげ。赤ひげは病気になってもお金がない人たちのための診療所に勤め、日夜格闘しています。腕も立つことから時にはお金持ちを往診し、ふっかけた診療代などを恵まれないひとたちに分けたりもしています。つまりここで医者として働く以上、幕府の御典医などへの出世はなく、まさに献身・ボランティア精神こそが医者の道というわけです。












そこに、長崎留学で最新のオランダ式医学を学んだばかりの(若大将♡)加山雄三(当時28歳)が、父の友人でもある三船を訪ねて挨拶にやって来ます。が、「おまえは今日からここで働くことになっている」と告げられ憮然とします。つまり加山にとっては幕府の御典医になるのが夢で、言っちゃ悪いがこんな汚い、しかもお金にも名誉にもならない貧乏人たちの診療なんてまっぴらごめん。加山さんグレて禁じられてる酒は飲む、診察しない、お仕着せと言われる診察着にも着替えない、そうして命令に逆らってクビにしてもらおうと(青い)奮闘劇を繰り返します。












そんなある夜、かねてから噂の美人狂女・香川京子が、隔離されてる病室(小屋)から脱走します。そして酒を飲んでふて寝していた加山の部屋に入り込みます。香川京子、狂ってますがとにかく美しくて、さめざめと泣きながら加山雄三に迫り、身の上話を語ります。幼い頃の性的虐待、そのトラウマで犯してしまった3つの殺人・・・カメラがワンカット・長廻しでじわりじわりと近づくなか、医者としてより香川京子の色香に一瞬ゆらぐ加山雄三(やっぱ男子!)と香川、着ていた振り袖を巧みに使い縛り上げるように加山雄三をホールドし、鬼の形相でかんざしをその首筋に突き立てようとするのでした!〜





香川京子(当時34歳)






間一髪、やってきた赤ひげに救われた加山、そりゃさすがに凹みます。ま、だからといってそう簡単に「参りました、この診療所でお世話になります」とはいきませんが、こうして徐々に加山雄三の心が変化していく様を、いくつものエピソードで涙しながら確認して行く映画であるともいえます。すなわち「赤ひげ」が奮闘するというより、加山雄三の成長を見つつ、区切りはないですが一話一話、滅茶苦茶見応えのあるオムニバス映画の各エピソードを、それぞれ堪能させてもらう感じ。冒頭、診療所にやってきた加山が案内されて診療所内の実態や、患者たちの人間模様に触れたのち、エピソード1として ↑ 香川京子の「狂女」があり、続くエピソード2は先に紹介した 「どん底 (1957)」 での痴呆役者、 「悪い奴ほどよく眠る (1960)」 では三船敏郎が迫る巨悪の鍵を握る小男としてそれぞれ怪演した藤原釜足(当時60歳)が、台詞なし、死期が迫って喘ぐだけなんですけど存在感見せて死にます。死んだあと、その娘が訪ねてやってきます。






晩年・TV必殺シリーズの藤原釜足(1905-1985)

 




父の死を知らされた娘・根岸明美(当時31歳)は、赤ひげと加山の前で切々と語り始めます。母が浮気をして出来た夫と無理矢理関係をもたされ3人の子どもを産まされたことなど、貧困と自尊心と恨みと諦めと・・・それをここもワンカット長芝居でやりきる根岸明美が素晴らしい。この人プロポーションが良くて1953年に米映画「アナタハンの女王」(新東宝の怪作:「女真珠王の復讐 (1956)」 監督 志村敏夫の元ネタを映画化したもの)でデビューしたのですが、この映画では良い感じに丸くなってて、人生の辛酸をすべて背負い込んでいるような姿でこれまた号泣。






根岸明美(1934-2008)







エピソード3は働き者で働きすぎて体を壊し診療所にいるのに、医者が眼を離したスキに外に出ては馬車を修理したり、とにかく皆のために働こうとする大工・山崎努(当時29歳)が、いよいよご臨終に際して住み慣れた長屋に戻ります。そこで皆を集め、山崎がどうしてそこまでの働き者になったのか?を語り始めます。その影には死ぬほど愛し合って別れなくてはならなかった女・桑野みゆき(当時23歳)との悲恋があったこと。これまた切なく、胸を衝くような物語です。





山崎努(1936-)


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桑野みゆき(1942-) 「モダン道中 その恋待ったなし (1958) 」監督 野村芳太郎 では岡田茉莉子のキャピキャピした妹役で、また 「彼岸花 (1958) 」監督 小津安二郎 でも主役の大人女優たちの妹分としていい味だしてましたが、この映画ではしっとりと♡。






エピソードとエピソードをつなぐお話や人間模様も良かったですが、この映画を傑作として締めくくるには、杉村春子♡が経営する女郎屋でこき使われ、精神が病んでしまった少女・二木(にき)てるみ(当時16歳)と、その彼女の再生に心血をそそぐ加山雄三とのエピソード4と、二木てるみがさらに心を取り戻すキッカケになる泥棒少年・頭師佳孝(当時10歳)とのエピソード5があってこそ。





二木てるみ(1949-)現在声優としても活躍中。






頭師佳孝(1955-) 5年後、黒澤明「どですかでん」では主役!


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二木てるみも頭師佳孝も5〜6歳に映画デビューしている演技派なのでたまりません。さり気ない仕草まで大人顔負けの怪演を見せてくれます。

加山雄三は二木てるみと向き合うことで、自分=医者の本分を知ることになり、逆に二木てるみは、そうされたことで、自分という存在が自分だけではなく他人と響き合ってこそなのだということを知るという構造。この(勝手にエピソード分けしましたが)エピソード4&5の流れはこの映画の核だと思います。他にも延々語りたくなってしまいますが、凄い。最高のスタッフ&キャストが放った傑作だと断言させて下さい。感謝。


つくづく映画は「娯楽」であり、同時に総合「芸術」であるということを思い知らされた185分。何度でも感謝したいし再見したい。え?あなた観てない!?・・・死ぬまでに是非!。





予告編 YOUTUBE 貴重!撮影風景&サントラ録音風景あり




2018年 3月30日
池袋・新文芸坐 ”女優人生70年企画 香川京子映画祭” にて観賞











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買って何度でも見たい。


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うーん。


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