野火 (1959) 監督 市川崑






「野火」Wikipedia




傑作です。

冒頭からラストまで、圧倒されながらグイグイと引き込まれてしまいました。

フィリピン・レイテ島。そこで戦う、いやもはや戦闘能力など無く、大本営からの迎撃や補充も夢物語、ただただ米軍の攻撃をかわしながら狭い島の中を敗走する日本兵たち。敗走するだけなのに、そこにはまだ上下関係・身分差が厳然としてあり、食料にありつけない兵隊や傷病兵たちが痩せた体をふらつかせながら彷徨う。港にさえ辿り着けば、きっとそこには日本軍の船舶があり島から出られるという噂に希望を抱いて。








船越英二(1923-2007)








ファーストシーンで大写しになる船越英二。映画のために絶食しガリガリに飢え削ぎ落とした姿を見て、しばらく船越英二ではなく仲代達矢だと勘違いして10分間くらい観ていた私(失礼)。つまり温厚な表情の印象が強い船越さんの鬼気迫る役づくりに、どちらかというとそうゆう役柄が多い仲代さんが重なって見えた次第。痩せただけではなく、ろくに食べずに灼熱の中、歩き倒しているわけですから、脳内の回路がおかしくなっている感じなんかも、無表情の顔からにじみ出ている。ほんと凄まじい演技・演出です。














黒澤映画ぽく(という表現は失敬かもしれませんが)錚々たる名優たちがわずかな出番にも関わらず参加して、その名演ぶりで「戦争」のリアリティが迫ります。何度も書きますが「戦争」を知っている、「戦争」を肌身で感じたスタッフ&キャストによる作品なので、何も知らない私にとっては、公開当時のリアルな空気感を知る術もないのですが、妄想・想像力を駆使して、ただただ感服ひれ伏すしかないのは、本当のところです。






右:ミッキー・カーチス Wikipedia (当時21歳)







映画は「塩」「靴」を巡るエピソード(是非観て下さい)などを挟みながら、終盤、船越英二とミッキー・カーチス、滝沢修の3人のサバイバルへと展開しますがこれが密室劇のようでスリリングでたまりません。とかく戦争映画を「反戦」メッセージへの証みたいに評価しがちですが、映画=大衆娯楽という側面があるのも事実なので思い切って言いますが、サスペンスとしても秀逸です。ミッキー・カーチスはもともとロカビリーの歌手で岡本喜八監督作品の出演が多く、まだレビューしていませんがそれで数作品を観ていて感じていたのはとかく「顔芸」が多いチャラい感じだったのですがこれは違う。真逆。シリアスでクレイジーでデンジャラスでクール(ってカタカナばっか)。そしてミッキーが仕える上官に滝沢修。これが横柄で薄汚い感じが最強の演技。滝沢修に関してはすでに 「霧の旗 (1965)」 監督 山田洋次 で絶賛しましたのでここではミッキーをもう少し。








健在です!(若い奥様とタイ在住だとか)


おれと戦争と音楽と







この映画における彼の演技を語ればネタバレになるので避けますが、ミッキーの実両親はともに日本人と英国人のハーフなので、風貌が中性的というか不思議な存在感を醸し出しています。そしてミュージシャンで当時最先端のカントリー(&ロック)&ウエスタンで大人気だったわけですから、仕草がややチャラい。すかした感じというか女子受けするというか。そんな彼だからこそ灼熱の太陽降り注ぐ、いつ殺されても仕方がないようなサバイバルな状況で、彼に銃を持たせてしまえばあとはどうなるか?はい、狂気しかないということなんですが、僕がどれほど文章を尽くしても稚拙すぎて伝わらないのがもどかしい。とにかく観て下さい。「戦争ものでしょ?重くならない〜?」とか言わないの!重くなってみてよ!







2015年、塚本晋也監督による映画化も話題になりました。機会があれば観比べてみたいです。


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音楽も良かった(このアルバム収録曲、半分くらい観賞してました)


芥川也寸志の世界










2018年 4月25日
角川シネマ ”大映男優祭” にて観賞








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