現代インチキ物語 騙し屋 (1964) 監督 増村保造






ストーリーが一番正しく書かれていたサイト




「ひめゆりの塔 (1953)」 監督 今井正 から続けてきた「戦争映画」連載ですが、実はこれは純粋なコメディ・喜劇で戦争映画ではありません。しかし登場人物たちが背負っているもの、ここではペテン師・詐欺師たちなんですが、その動機というか、詐欺を「職業」として志を持ってやっておられるその根底には、まぎれも無く「戦争」があり、ひょっとすると彼らはまだ戦っているのかも?と考えて「戦争映画」として紹介してみます。ま、そんなこと言ったら昭和39年、戦後19年と言えば大人たちの多くが何らかの形で戦争を経験してきたわけで、それを根底にとか考えたら全部そうなるやん〜なんですけど〜。








脚本:藤本義一 Wikipedia (1933-2012)








この映画で興味深かったのは、騙し屋集団ものによくある仲間割れとかスパイがいたとか、或は大きな組織に挑んで搔っ攫うみたいな「定番」がまったくなく、最後までチームワークよく、かつ「せこく」騙しを繰り返していくところ。ラストは戦争の焼け跡みたいな空き地で面々がそろって「まだまだ騙すぞ〜」と誓う場面で完。藤本義一による物語でと言えばそれらしい(大阪出身の私の記憶からしても)しかも監督はマエストロ・増村保造なんだから「ガッチリ」とせこさを魅せてくれるというか、数々のレビューにも書かれているとおり、増村作品としても異色&貴重な出来映えです。そもそも大阪が舞台で大阪ロケもあるのに製作は大映東京。そこらへんからして不思議な空気感が漂ってもいました。









だましの手口 (PHP新書)






藤山寛美らとともに松竹新喜劇を立ち上げた 曽我廼家明蝶 (そがのや・めいちょう 1908-1999) Wikipedia が騙し屋のリーダー。曽我廼家さんはいわゆる関西演劇&喜劇人の重鎮でもあるわけで、それが増村監督作品の主役なわけですから、たぶんいや恐らく絶対めちゃくちゃ力が入ったと思います。早口の大阪弁で騙しの矜持を滔々と語るその語り口に、これが歌舞伎の舞台なら「よっ!曽我廼家!」みたいなレスポンスが起こりえるだろう感じ。つまり、ぶっちゃけ言うと完璧すぎるというか、「これこそ上方喜劇の台詞回しでっせ〜」みたいな(個人的な意見で申し訳ないけれど)くどさを感じました。どのレビューを読んでもそれに言及するクチがなかったのであえて書きましたがこの映画、小気味良すぎて居心地悪くなる感じ?が少しあります。準主役を張る大好きな曲者俳優 伊藤雄之助 Wikipedia(1919-1980) がいつものようにクドく感じないのも(きっと主役なんてたぶん初めてな)曽我廼家明蝶さんへの「遠慮」があったんじゃなかったのかな?と勘ぐったり。








ペテン師で検索すると、今どきはこうなる。


ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌









この映画における騙し屋集合写真。右から Wikiによると超悲しい人生末路だった 丸井太郎(1935-1967) Wikipedia  隣に伊藤雄之助、中央に曽我廼家明蝶、奥隣に 船越英二 (1923-2007) Wikipedia その奥隣に伊藤雄之助の妻役で同じく騙し屋で活躍する 園佳也子 (その・かやこ 1929-2010) 手前にクレージー・キャッツの 犬塚弘 (1929-)








・・・こうして観ると、この時代のトップクラスの助演陣が総出演という感じ。だから「クドさ」は置いといて面白い。演劇の妙を堪能できたのも確かでした。普段なら美人女優の影で姑息な役柄が多い園佳也子も溌剌&セクシーに(決して行き過ぎず)好演してました。






♡。








曽我廼家明蝶を筆頭とする面々の矜持=プライドは「騙した相手に騙されたと思わせないから犯罪ではない」というもの。例えば古雑誌から大量の写真を切り抜いて小分けにして、夜道でこっそり酔っぱらいサラリーマンに「48手のええ写真おまっせ♡」と声を掛け、その気にさせて売りつけるペテン。あとで苦情を言われても「48手でと言いましたよね?この写真の中には相撲の写真もあるし何か問題でも?」と開き直るという。
他にも天ぷら屋に電話をして大量に注文し、運ばれて来たら「そんなん注文してへんで」とお金を払わず、困った店員に「捨てるしかないねやったら1個10円で買うたるわ」として喰らうとか、みみっちい(笑)。








騙しのカラクリ (角川文庫)







そんな小さな騙しの連続・積み重ねで、先に書いた通りそれが最終的に巨悪や権力に対峙したりすることもないまま終わる。でどうして戦争映画という括りにしたのかと言えば、伊藤雄之助が語る台詞「国家は国民を騙して戦争に向かわせた。それこそ詐欺」。つまり自分たちがやっていることは国家のしたことに比べれば詐欺でもなんでもないという論理であり、戦後民主主義、東京オリンピックを控えた高度経済成長期まっただ中の日本という国への疑義、反撥、反骨精神の集団、その生き様を見たからなのです。






ある傷痍軍人の写真。







映画の終盤、江戸時代の埋蔵金を発見して大金持ちになり、新聞社の取材を受けている地主のもとへ傷痍軍人になりすました騙し屋がたかります。騙し屋Aが「その埋蔵金をそこへ埋めたのは俺だ」と主張。いわく戦前に地主の先代の元で滅私奉公し、戦争でお国のために戦って障がい者になり、なのに俺に1円も寄越さないのはおかしいと。戦前の話は作り話だろうと地主は突っぱねようとしますが、そこへ同じ傷痍軍人でAの上官・騙し屋BがやってきてAを諭します「なんてみっともない!大日本帝国軍人らしからぬ強請ではないか!」と。BはAを説得して連れ出そうとしますが、地主は新聞記者の手前、せめていくらか寄付でもしなければ(どうせ埋蔵金を換金すれば高額が手に入るはずなので)収まりがつかなくなって払ってしまうというもの。せこさが前面にあるので何ともですが、騙し屋連中にすれば埋蔵金をすべて搔っ攫うようなことをすればそれは犯罪。しかしお国のために戦った兵隊さんへの寄付として払わせ手に入れれば(しかも極めて小額)それは犯罪ではないということ(払わせることがまるで義務であるかのように強請ること、そのやりとりにこだわることが彼らの矜持なんです)。面白かった〜。







2018年 4月3日
神田・神保町シアター ”東西対決! 輝ける<大映>男優の世界” にて観賞








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