カモとねぎ (1968) 監督 谷口千吉

ストーリー Movie Walker
面白かった。
観る前にさてどっちだ?と怪しんだけど杞憂に終わりました。というのは、この時代の「コメディ」って笑味期限があって、今でも笑えるか?笑えないか?ま、どっちにしても観てみないと分からないのですが、これは面白かった。社会風刺も利いていて良く。ペテン師集団のボスを演じる森雅之(当時なんと57歳には見えない若々しさ)が素晴らしく良かった。 「白痴 (1951)」 監督 黒澤明 や 「雨月物語 (1953) 」監督 溝口健二 に代表される一流俳優の森さんが、コスプレです。変装して悪い奴らやモラルを振りかざす者たちを騙します、カモります。
渋っ!

森雅之―知性の愁い、官能の惑わし (映画読本)
釣りをする老人・近眼眼鏡の税務署所員・新聞記者・自衛隊不発弾処理班・沖縄(もちろん返還前)駐留のMP(米国人)・市役所教育課・インテリヤクザ・・・フツー57歳にもなって、こんな役柄ひとつ間違えば見苦しく暑苦しく滑ってしまいかねないところ、いやいやそこは、そこが森雅之たる所以なんでしょう、軽妙に、お見事に演じ切っておられました。素晴らしい!
緑魔子(当時24歳・写真は別映画)♡

「可愛いくて凄い女 (1966)」 監督 小西通雄 でも同じくダンディな天知茂相手にスリ師演じていましたが、緑魔子のトランジスタなボディも美しく、登場するたびに衣装が変わってそれを眺めるだけでも幸せな気分になれます。緑魔子、必死に森雅之にアタックかけますが、そんな簡単に落ちるほどやわな男子ではありません。ラストまでダンディズムを貫きます。
高島忠夫(当時38歳ってこれまた見えない若々しさ&ちょいデブっぷり)。おしどり夫婦でも有名でした。

高島さんが女にだらしがない役で、砂塚さんはオネエ言葉を繰り出す発明オタク・砂塚秀夫(当時36歳)。

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この二人の凸凹コンビぶりを、映画の冒頭で印象づけるいくつかの芝居がちょっと暑苦しくしんどかったくらいで、まるでモンキー・パンチ「ルパン三世」を正しく実写化したみたいなノリの映画でした。監督の谷口千吉さんは三船敏郎デビュー作「銀嶺の果て(1947年)」の脚本・監督をした戦前からの監督で、黒澤明は親友だったそうで、のちに八千草薫さんと不倫に走り(二人の関係はおしどり夫婦として続く)会社から干されたこともあるなど割とワイルドなお方。 谷口千吉 Wikipedia 参照。 この「カモとねぎ」発表後、大阪万博の記録映画を監督して以降、奥様の送り迎えなどをして、監督業から遠ざかったそうです。

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後半、ベトナム戦争で秘かに武器密売をする会社の社長役で、ザ・水戸黄門・東野英治郎が出ておりますが、彼は監督の谷口さんとかつて演劇集団を作っていたらしく、また谷口監督の助監督として働いた岡本喜八監督に見いだされた砂塚秀夫が良い味だしてたり、さらに大阪人の私には嬉しいのですが、緑魔子が勤める暴力バーのボーイ役で、吉本新喜劇のお婆さん役で死ぬほど笑わせてもらった桑原和男が、男役、ひょうきんなお芝居を見せておりました。
桑原和男(1936〜)

さらに東野英治郎の部下役で、上方落語界の星!人間国宝・桂米朝さん(1925-2015)も出演してました!

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あと公害被害に苦しむ娘役で、ウルトラマンのフジ隊員・桜井浩子(当時22歳)が。

最高に可笑しかったのは、町のピンク映画館の前でビラをまいて抗議する婦人会の代表・山岡久乃(当時42歳)が学校で開いたバザーに森雅之らが変装・潜入し「文部省から若者に見せるべき”教育映画”を提供します」として上映会を開きます。それを見ている間に森らはバザーの利益を搔っ攫うわけですが、この教育映画、途中からなにやら怪しい内容になっていって・・・山岡久乃を始めとする婦人会の奥様たち「これは見てはならないものでは?」「いえこれは確かに文部省推薦の」「すなわちこのようなことはしてはならないという戒めで」「あっ!」「はっぁぁ」・・・画面に釘付けでやがて悶える奥様たち。そこへ高島忠夫が通報した警察隊がやってきて「わいせつ物陳列罪」で逮捕されるという場面。最高!是非、ご覧下さい!
山岡久乃 (1926-1999)

タイトルにある「鴨がねぎを背負ってくる」を調べてみました。良いことが重なり、ますます都合が良いことのたとえ。鴨鍋にねぎはつきものだが、鴨が自分でねぎまで背負ってやって来てくれれば、すぐに食べられて好都合であることから。多くは、お人好しが、こちらの利益になる材料を持ってくることを言う。 なるほど、詐欺用語です。

左から高島忠夫、緑魔子、谷口監督、飯塚秀夫。

残念、ソフト化されておりませ〜ん!
2018年 2月15日
神田・神保町シアター ”生誕100年記念 池辺良と昭和のダンディズム にっぽん美男子(イケメン)列伝” にて観賞

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