大菩薩峠 (1957) 監督 内田吐夢







ストーリー allcinema




内田吐夢監督2本目。





中里介山(なかざと・かいざん 1885-1944)による原作小説は 大菩薩峠(小説)Wikipedia によると、何と1913年~1941年に新聞などに連載された41巻にのぼる未完の一大巨編とか。およそ30年に渡って書き綴られ、未完て。だからそれをどう映画化するかは関係者にとってきっと意欲をそそられただろうし、同時代の小説ファンたちもその映像化に心躍らされたと想像する。













1935(昭和10)年、日活で最初の映画化。監督は稲垣浩、助監督にその二年後 「人情紙風船 (1937)」  を監督して日中戦争に出征、帰らぬ人となった山中貞雄。主役・机竜之介(つくえ・りゅうのすけ)を演じたのは大河内伝次郎(「伝」はにんべんに専)。翌年に続編も製作。


写真「君は時代劇を見たか」佐藤忠男(じゃこめてい出版 1977年)より









二回目の映画化は戦後1955(昭和30)年、東映で監督は( ↑ 掲出本によると”早撮りだけで有名だった”という渡辺邦男。主役に片岡千恵蔵で三部作。しかし三本作ってもまだまだ原作の六分の一くらいらしく、映画では終わりにするために机竜之介を死なせているらしい。

写真「君は時代劇を見たか」佐藤忠男(じゃこめてい出版 1977年)より










そして三回目がこれで、これも三部作。1957(昭和32)年〜1959年。しかも同じ東映で同じ片岡千恵蔵が主役。改めて作り直した背景は分かりませんが、やはり人気の原作だし巨匠・内田監督だしてことでしょうか?きっとテレビがない世の中、チャンバラに酔いしれる観客の期待もあったのだろうと思います。

写真「君は時代劇を見たか」佐藤忠男(じゃこめてい出版 1977年)より












ここでも机竜之介を死なせてしまったらしく、つまり原作を最後までコンプリートすることなく(ま、原作が未完なので)終わったそうです。




そして、映画化はまだ終わりません。





1960(昭和35)年に大映が動きます。監督は名匠・三隅研次でこれまた三部作で、主役は市川雷蔵。ヒロインに勝新太郎の奥様・中村玉緒♡で山本富士子さんも♡。









まだ終わりません。東宝が1966(昭和41)年に、岡本喜八監督、仲代達矢主演で。ヒロインは新珠三千代♡で、内藤洋子♡ちゃんも。(♡ばっか)加山雄三も三船敏郎も♡。








・・・さそがにこれは1本だけだったそうです。






といったことを、な〜んにも知らずに2018年お正月に観賞しました。観賞後、多くのシルバー世代の人たちが「これって続編あったよね?」とか「記憶と違ってた」とか会話しているのを聞き、当時の人たちにとっては劇場で観て当然の、大衆娯楽だったという感覚。すなわち何と言っても片岡千恵蔵の立ち回りの美しさに酔いしれる映画と言う感じ。







スタア・片岡千恵蔵(1903−1983)







すでに何度もここで書いてますが、黒澤明が 「用心棒 (1961)」 において、初めて人が斬られる効果音や、リアルな血しぶきを発明する以前の作品なので、そうゆう系統に連なる現代のチャンバラ映画感覚で見ると物足りなく感じます。あくまでも様式美優先。「よっ!千恵蔵!」と心で喝采を叫び観るのが正しいかと。いや誤解なきよう、だからと言って当時のチャンバラ映画を貶めるつもりではなく、カメラ・照明・美術含めた総合芸術のなかで、いかに「殺陣」が表現されているかは、めちゃくちゃ堪能できました。














タイトルバック、大写しになる大菩薩峠の実景。トム監督お得意の180度パンで峠の風景を見せたあと、峠にひとり佇む片岡千恵蔵。山笠をかぶり表情を見せず、もちろん刀を携えております。そこに白装束で巡礼している老人男とその孫娘が辿り着きます。「お侍さん」と挨拶をして、孫娘は水を汲みに離れます。残された信心深い老人は壮大な景色の前で念仏を唱えます。

と・・・

その背後から片岡千恵蔵が何も言わず、ズバッ!と老人を斬り捨てるのです。なんと言うオープニング! 罪も無い人の良さそうな老人を、しかも背中から斬る!?

びっくりしました。主役が、これって無差別殺人やん!先に書いた通り、何も知らずに観た私は以降、この片岡千恵蔵演じる机竜之介のやることなすこと、まったく共感が覚えられず。













あとになって調べて、この机竜之介(=片岡千恵蔵)って男、そうゆうヤツなんですって。少々理解不能なんですが、すなわち人の苦悩を斬る、そしてその苦悩を背負って斬りつづけるという、カルマみたいに囚われている設定なんです。ストーリーはその後、道場で対戦予定の強者の妻が、前日に「あなたと戦えば夫は殺される、どうか試合に負けて下さい」と片岡千恵蔵に懇願したところ、千恵蔵その妻を強姦します。で翌日、木刀での対戦だけどきっちりその夫を殺します。で、さらに犯した妻をさらって京都へ逃げます。妻はいつしか千恵蔵に惹かれ内縁の妻になりますが、千恵蔵朝から飲んだくれてお金はないしダメダメ生活続けたうえ、無惨にも女も斬ります。






千恵蔵別映画







・・・などなど色々あって、今度は冒頭で残された孫娘が成長し千恵蔵と再会。孫娘は千恵蔵が爺ちゃまを殺した張本人とは知らず一緒になったりします。いやはや何度も書きますが、まったく予備知識がないので片岡千恵蔵のダメダメぶり(基本的に言葉少なくニヒルぶってる感じ)と残虐(そこに様式美あれど)さに「おいおいアカンや〜ん!」と突っ込みながら楽しみました。照明・美術・カメラも最高。なんだか矛盾しているけど、勧善懲悪ではないダークヒーロー(ヒーローでは決してないけど)な片岡千恵蔵の魅力炸裂って感じ。機会があれば続編も観てみたいです。そう、人間って基本あかんたれなの知ってるし(笑)。








2018年 1月16日
神田・神保町シアター  ”新春時代劇傑作選 めでてぇなあ〜!”にて観賞












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DVDあります。


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