侍 (1965) 監督 岡本喜八







ストーリー allcinema





三船敏郎を続けます。



見応えあります。岡本喜八初の本格時代劇。キャストを見ても黒澤明作品常連の強者ばかりだし、当時としては破格の1億円超えの製作費。三船さんも自身が立ち上げた三船プロダクション第二回作品ということだし、長かった 「赤ひげ (1965) 」監督 黒澤明 の撮影を終えてすぐにこれだったから、かなり力が入っていたと思います(「侍」が1月公開、「赤ひげ」は4月公開)。



残念なのは、もう何度も書いて来たので繰り返しばっかりになるけれど、効果音の薄さ。


この時代、黒澤明が 「用心棒 (1961)」 で「発明」した、鮮血ほとばしる映像と効果音以降、それらを「新時代劇」と呼び、殺陣(たて)の美しさや所作にこだわった従来のものを「(正統)時代劇」として区別していたらしいけど、喜八監督のこれは断然前者なんだけど、「薄い」。







当時の解説






それは置いといて、お話は面白い。何せ脚本も黒澤組の 橋本忍 Wikipedia (1918-2018) (先頃100歳で大往生。合掌!)だし構成が緻密。

歴史的事件、桜田門外の変をモチーフにした創作なんだけど、大老・井伊直弼の圧政(安政の大獄とかね)と天皇家を無視した日米通商条約締結とかで特に水戸藩が大老に対して恨み骨髄で集結、暗殺を企てます。その中に紛れ込むようにして素性がやや不明な浪人・三船敏郎。三船には辛い過去があり、それは武芸に秀でて良家の新珠三千代と恋仲だったのですが、家柄の不釣り合いを理由に結婚できずグレてしまったんですね。と、これだけ書くと「何を恋に生きとるねん!?」になってしまうのですが、その裏には三船の隠された素性があったのです。















彼はあるものすごいお侍の妾の子で、しかしこの侍=父親の厳命で、武芸を極め師範代になるまでは素性を明かさないことになっておりました。だから東野英治郎演じる養父、杉村春子演じる養母もその厳命を守っていたのです。三船はあともう少し辛抱したら念願の師範代になれたのに、その前に明かせない素性(本人にも知らされない)のため恋に破れてしまったのでした。あーもったいないというか・・・。







てやっ!







グレてしまった三船はそれでもやはり武士として生きたい、死にたいということで水戸藩の計画に参加します。大老の首を自ら取って天下にその名を刻みたいと。しかし水戸藩の暗殺計画、諜報活動が続く中、どうもその計画が大老側に洩れている疑惑が持ち上がり、いつもは悪人・エロ担当の伊藤雄之助をトップとする水戸藩は、素性が良く分からない三船敏郎を疑い始めます。色々あって何とか疑惑が晴れるのですが、今度は三船と同じように単身計画に参加していた別藩の武士で、三船と昵懇の仲でもある小林桂樹に疑いがかかり、この武芸に強く人格者で、可愛い八千草薫を嫁に持ち生まれたばかりの長男を愛する小林がスパイだと断じられてしまうのです。







小林桂樹 (1923-2010) 別写真









伊藤雄之助はここで三船に小林の暗殺を命じます。三船はいくらなんでも親友は斬れない。が斬らなければ自分に疑いがかかる。さらに人生最大の功名となるはずの井伊直弼暗殺に参加できない、とあっては唇を噛み締めてその命令に従うのです。







てやっ!てやっ!てやっ!









小林の自宅に、本部に集合せよの便りが届きます。小林、八千草薫と長男との別れもそこそこに夜道を向かいます。と、目の前に立ちふさがる三船敏郎。





小林「お、びっくりしたな、どうしたんだ?」


 三船、おもむろに刀を抜いて上段に構えます。


小林「どうしたんだ?おい、三船!?」


三船「(刀を)抜け!」


小林「どうしたんだ?何故だ?おい!?」


 三船、無言で斬り掛かります。やむなく小林も抜刀して応じますが、
 ひたすら叫ぶのは小林のみ。


小林「何故だ!?何故だ!?」


 三船、最後まで無言で無念さを振り払うべく鬼の形相で親友を斬り捨てます。


小林「何故だぁ〜〜〜〜(死)」





・・・哀しいシーンでした。その後、スパイは小林ではなく上層部の平田昭彦だったことが分かり、伊藤雄之助怒り狂って平田殺されるんですが、三船はどうなるのよ?八千草薫はどうなるのよ!と腹が立ちました。







三船刀技解説








こうなったら何がなんでも大老の首は俺が取る!雪降る桜田門、でやでやでや〜と水戸藩が襲撃、圧巻の斬り合いは見事です。














この桜田門のセットも凄い。さて、もうネタバレしますが(知りたくない人は読まないでね)三船敏郎の本当の父親こそ、井伊直弼だったのです。三船血まみれになりながら、そんなことは最後まで知らないまま、井伊直弼の乗った籠に辿り着き、父親の首を撥ね掲げて狂気の雄叫びをあげます。映画はここで終わるのですが、水戸藩は襲撃の前に、襲撃に参加する武士(三船含む)全員を脱藩扱いまたは人事不明の扱いにしていました。つまり、三船の功名は記録に残らないというオチ。空しすぎるやん!















黒澤組の俳優さん総出演でも、演出が変わるとこうも違って見えるのかという発見もありました。やっぱり岡本喜八節はいささかベタで分かりやすいというのかな?例えば本当のことが言えず無言を貫く母・杉村春子が三船に迫られて体が震える芝居なんか、黒澤映画の杉村さんだったら体を震えさせず演じてたと思うし。うん。どちらも良いと思います。幕末の不条理な悶々を味わいたい方は是非ご覧下さい!














2018年 5月8日
ラピュタ阿佐ヶ谷  ”岡本喜八 鬼才・奇才・キ才”にて観賞









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