地獄門 (1953) 監督 衣笠貞之助






ストーリー 地獄門 Wikipedia




凄い。

時代物特有の大げさな台詞回しや、聞き取りにくい人物名など、「平家物語」などの知識が少しでもあればもっと楽しめたかもしれませんが、これ大映初のカラー(総天然色)映画で、イーストマンカラー(Kodak社)使用。ってもそこらへんも詳しくはないのですが、とにかく美しい。原色がこれでもか!と、なのにけばけばしく感じない。例えば紗を場面の前に使って、手前(紗側)に当てる照明と、紗を通過して当たる奥の空間、さらに奥に直接当てる照明で奥行きを表現したり。当然セットや装飾の見事さもあるのですが、芸術作品として滅茶苦茶見応えある一作でした。










監督は 衣笠貞之助 (1896-1982) Wikipedia 個人的には先に観た 「大阪の女 (1958)」 の演出力に痺れまくりだったので、期待して観賞。時代物なのでまた違うスキルを見せつけられつつ堪能致しました。

主演は大スタア 長谷川一夫 (1908-1984) wikipedia 素晴らしい。ほんと腹が立つくらい凄い。「腹が立つ」というのは今回の役柄。






小説 長谷川一夫―男の花道 (下)







いち兵卒で身分的にそう高くない武士・長谷川一夫は、クーデターの混乱をいち早く平家に報告したことで認められ、将軍から「褒美は何なりと」とお言葉を戴きます。一夫(呼び捨て御免)は、混乱の最中に救出した女性 京マチ子 (1924-) Wikipedia にぞっこんとなっていたので、その女を嫁に欲しい!と願い出ます。しかし、京マチ子は人妻でした。






京マチ子。ほんと何度も書いてますが、最高の女優さんです♡







京マチ子の夫は、皇室側近(ほんと珍しく善人役)の 山形勲 (1915-1996) Wikipedia です。夫婦仲は順調で、大きな屋敷で愛に溢れた生活(京マチ子が奏でる琴の調べを肴に日本酒を杯でとか)を送っていたので当然却下されますが、一夫あきらめるどころか全身に火が付いたようになって「褒美は何なりと」と仰られたではないか!わしは京マチ子が欲しいのじゃ!と逆ギレして譲りません。





山形勲。善人ぽい顔だからこそ、悪が際立つという役柄がほとんどだけど、今回はめっちゃ良い男でした。







長谷川一夫、ここからがしつこいです。一夫は昇進してますので、酒席なんかで山形勲と同席になって自分の武功を誇らしげに謳ったり(男としておれのほうが偉いでしょ!みたく)絡んだりして将軍たちの顰蹙も買いますが、全然へこたれません。ならば武芸こそとばかり、vs 山形勲と流鏑馬(やぶさめ)勝負をもちかけ勝ちます。そこで調子に乗ってますます「京マチ子はおれのものだ!」と狂気、今でいうストーカーみたく、マチ子様の家にまで押し掛けたりします。廻りがどんなに説得しても「褒美は褒美」貰って当然!と譲りません。一夫、徹底的に変態キチガイで、観ていてムカムカします。











京マチ子もやさしくて、迫られて迫られて、どういう心境に堕ちていくのか?(それでも決して体を許したりはしません)は、是非観て欲しいのですが、一夫はマチ子様の叔母の家に押し込み、叔母を脅し「叔母が病気」と嘘の伝令を流し、慌てて駆けつけたマチ子さんを監禁、さらに脅して迫ります。もう相手の事情や気持ちなんてアホな一夫には見えません。もうほんと最低の男です。





読みづらいけど、当時の宣伝記事。




拡大して続けます。











ああ〜ラストまで書きたくなってきた!

よし、書きます。

映画観たい人は、この先は読むな〜!


ネタバレ行くよ!




さて、そこまで迫られた京マチ子は、一夫の濃く熱いアタックに根負けします。そしてなんと「今夜、私の家に忍び込んで、寝ている夫を殺して欲しい」と言うのです!。

その夜、京マチ子は琴を演奏して夫・山形勲の晩酌を彩り、何も知らない勲は寝ます。しかし、それはマチ子様の作戦で、長谷川一夫に伝えた寝室というか寝床ではないところに寝かしつけます。

一夫が忍び込みます。月明かりのみで薄暗い寝所で布団の盛り上がりを見た一夫は、掲げた長刀で一気にズブっと刺します。そして布団をめくって「!?」。そこには即死したマチ子様が・・・。











つまり、当時の貞操感ということなのでしょうか?。マチ子様の作戦のベースにあるのは、「こんな私がいるから一夫は惑わされるし、惑わした原因は私にあり、愛する夫を守るためには私が死ぬしかない」と。

う〜ん。なんともなんちゅうか、切なすぎます。





左から、一夫、勲、マチ子♡






一夫の慟哭に勲、目覚めて駆けつけます。一夫、泣きじゃくりながら土下座して謝ります。そして俺を殺してくれ〜と懇願します。しかしほんと珍しく善人・紳士な山形勲は(まあこんなアホ殺しても愛する妻は戻って来ないし)一夫を許します。そして一夫は剃髪し、お坊さんになって修行の旅に出て行くところで「完」。

いやはや。









この映画、公開した年のランキングでは10位以内に入らなかったそうです。 「東京物語 (1953) 」監督 小津安二郎 とか、同じ京マチ子が狂気を演じる 「雨月物語 (1953) 」監督 溝口健二  などの傑作に押されて埋もれてしまったそう。しかし公開の翌年、なんとフランス・カンヌ映画祭でパルムドール受賞をはじめ、アメリカ・アカデミー賞とかも取っちゃうんだから凄い。ま、エキゾチックな東洋美が受けたんでしょうけど。いやいや、それでも今回観て素晴らしいなと。もっとたくさんの人たちに知って欲しい名作です!






2018年 4月23日 
角川シネマ ”大映男優祭” にて観賞







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