恐怖の時間 (1964) 監督 岩内克己






レビュー



面白い!!!

黒澤明「天国と地獄」の犯人役で、出番は少ないが強烈な印象を残した 山崎努 (1936-) Wikipedia が同じく犯人役を演じ、かつ同じエド・マクベイン原作の映画化。東京オリンピックイヤーの2月に公開した傑作密室サスペンスです。これ、名優・山崎努初主演作、そして共演者凄すぎなのにソフト化されておらず、今回ラピュタ阿佐ヶ谷で観賞したのですが、ニュープリントぽく画質最高でめちゃくちゃ楽しめました。












山崎努はその早朝、麻薬密売の運び屋をしていた恋人が警察との銃撃戦に巻き込まれ、刑事・加山雄三(当時27歳)の放った弾丸で死亡したことに激しく怒り、ピストルと小瓶に入ったニトログリセリンを持ち込んで、加山がいるはずの(たぶん西新宿の)警察署2階にある刑事部屋に(まるで知り合いを訪ねるように)乱入します。時間は夕方の6時。加山は外出中で刑事部屋には巡査部長・志村喬(当時59歳)と、部下の土屋嘉男(当時37歳)、デビュー2作目でウルトラマンになる前の黒部進(当時25歳)ほか2〜3名の刑事がおりました。そこで突如、山崎努は獣のような眼光でピストルを向け、「加山雄三を撃ち殺す!」ときたわけです。






この顔つき♡。ここから若い当時の風貌はなかなか想像できませんが。


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加山は愛妻・星由里子(当時21歳)がおめでたで病院に付き添いで行ってたのですが、署には6時半には戻ると伝言していました。山崎は刑事ひとりひとりの警察手帳を見て、そこに加山がいないことに逆上します。しかしうっかり「6時半に戻ってくる」ことを若きウルトラマンが漏らしてしまい、「じゃあ待たしてもらうぜ!」と刑事部屋に居座ります。とにかく狂犬が一匹やってきたので刑事たち大弱り。へたに刺激するとそれが本物かどうかはわからないけど爆薬持っているわけですし。山崎は志村喬に銃を突きつけ、他の刑事たちの拳銃も奪います。手も足も出ない刑事たち、色々目配せしながら隙あらば飛びかからんとじりじりとタイミングを計ったり。そして6時半になりましたが肝心の加山雄三が戻ってきません。実は愛妻・星由里子がうきうきで、署に戻りたがる加山をレストランに連れて行き食事していたのです。






右:星由里子 当時すでに若大将シリーズでばんばん共演してました(たぶん絶対できてたと思う笑)。


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加山雄三が戻って来ないまま、刑事と山崎の睨み合いは続きます。そこにヤクザを殺した娼婦(映画の正式役名は”パン助”)を連行した太った刑事が来ます。いろいろありますがこの二人も人質というかにされ、さらに今朝の加山の発砲事件を取材するためブン屋の男もきます。土屋嘉男はパン助の調書を取ると見せかけ、刑事部屋が大変になっている文書を数枚書き、窓の外へばらまきますが、のちに通報の電話がきてうまく答えられないのでバレて、山崎努にボコボコにされます。パン助もとい娼婦が手錠されたままそれを見て大喜び。ほかにもマッチでたばこの火を付けてあげようと見せかけ山崎の頬に「熱っ!」としようとしたり、たった一匹の犬を御せないイライラ・ジリジリが見ていておもろいおもろい。




娼婦を演じたのは劇団俳優座出身の 小林哲子 (1941-1994) Wikipedia 東宝の特撮映画「海底軍艦 (1963)」ムウ帝国皇帝役でマニアに記憶されているそうです。







肺炎で53歳の若さで亡くなった方なんですが、この小林哲子が素晴らしい。フツーこんなサスペンスに出てくる娼婦役って、豊満な体とケバい化粧して下品な言葉使ってればそれだけで良かったりするのですが、彼女はそれより一歩、より役柄を生きている感じ。刑事たちを嘲笑し、サスペンスに彩りを添えるだけではなく、役柄の卑屈さ、悲哀、そして狡猾さが見事に出ておりました。

いっぽう加山は星由里子をひとり帰らせて、朝の事件で使ったマイ拳銃を署に返還しようとやっとこさ戻ってきます。が、その事件での発砲の正当性確認のため、砂町(だからちょっと遠い)警察署に向かうよう一階で告げられ、なんと二階に戻らず行っちゃいます。さらに加山の発砲で死んでしまった運び屋の女(=山崎努の恋人)の貧しい家を訪ね焼香してから署に戻ろうとします。











山崎努はピストルをニトログリセリンの小瓶に向けたまま、死んだ恋人の写真を取り出し思い出にふけったりします。回想シーンは若い二人が公園の遊具で遊んだり、ジェットコースターに乗ったり、何だか面映い、陳腐な(この映画に弱点があるとすればここ)ものなのですが、犯行の動機の根底は「天国と地獄」でもそうだったように貧困であり、映画では映されていませんでしたが、低賃金で働かざるを得ない日常と、そこに小さな幸せを求めて愛し合っていた想いが国家権力の銃弾によって打ち破られたことでした。さらに山崎努は愛する可愛い(ほんと可愛い)彼女が、麻薬の運び屋なんてするわけがないと言い張って譲りません。




タイトルの「恐怖」と言えば、ニトログリセリンと言えば、フランス映画の傑作「恐怖の報酬 (1953)」。ならずものたちが一攫千金を夢見て、油田火災を吹き消すために、大量のニトログリセリンをトラックで山道を運ぶサスペンス。ぼくはこっち ↓ 1977年、大阪梅田OS劇場の大スクリーンで観た、ウイリアム・フリードキン(エクソシストのね)監督のリメイク版












なんと!2018年末にリマスター完全版で再上映してたって!知らなかったよ〜!この映画にはハマりました。公開当時30分もカットされたものを観たのですが、それでもぼくはノックアウト。完全版はすでにVHSで観ましたが、おもろいです。世界的に再評価、今頃されてます。





「恐怖の報酬」完全版オフィシャルサイト(予告編付き)

ぼくと同じ大阪でリアルタイムで観た小島秀夫さんのレビュー



閑話休題。




さてさて、恋人との思い出にしばし油断した山崎努、そこでようやく飛びかかった刑事たちともみ合ったはずみでピストルを床に落としてしまいます。さあそのピストルを拾ったのが、手錠されたままの娼婦・小林哲子!


「動くと撃つわよ!」


一転して刑事部屋の実権がパン助のものになります(ここ痛快です!)。そして手錠の鍵を出させますが、鍵を掴んだのは山崎努。ここで山崎は取引します。ピストルを渡してくれれば鍵を渡すと。刑事たち大反対のブーイング!哲子ちゃん、ない頭で必死に考えます。そう、彼女はただ逃げたいだけだし、撃つ気なんてないし。



哲 「そうかい、じゃ外しておくれ」



とピストルを山崎に渡した途端、ガーン!あわれ哲子殴られ昏倒。山崎努、再び刑事部屋の王様に(笑)。





原作本。今も読み継がれてます。すごい。


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さあ色々寄り道して戻って来ない加山雄三。山崎努は加山の自宅に電話をさせ、嫁・星由里子に「至急署までくるように」伝えます。由里子ちゃん超心配になってタクシーで向かいます。努くん本気です。恋人を殺されたんだから、雄三に同じ苦しみを与えて当然!という気です。でついにやってきます。努、ピストル構えます、由里子ちゃん、刑事部屋に入ってきます!




あ〜!!!!!




ラストだけ書かないでおきましょう。ひょっとして観る機会あるかもだし、ソフト化されることもあるだろうしってことで。

本筋とは関係ないですが、刑事部屋にこの当時実際に日本を震撼させた 吉展ちゃん誘拐殺人事件 Wikipedia (1963年発生、1965年犯人逮捕) の、吉展ちゃんの顔写真が貼られていたのがリアルでした。

また会話の中で「連れ込み宿(今で言うラブホ)一泊800円、うきうき星由里子が奮発してレストランで頼んだ料理がヒレカツ500円。値段を知った加山雄三「高いよ〜!」。

ほんと面白かった!

役者たちのアンサンブルがとても良く、さすが山崎努も過剰にならず(やっぱ名優は昔から名優です)機会があれば是非の観賞をおすすめしま〜す!



そしてこのあと、加山雄三と山崎努、土屋嘉男、志村喬は永遠の傑作 「赤ひげ (1965)」 監督 黒澤明 での名演技へと繋がっていくのであります。





2019年 1月7日(観てほとんどすぐレビューしました!)
ラピュタ阿佐ヶ谷 ”Laputa Asagaya 20th anniversary もう一度みたいにおこたえします”








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