縮図(1953) 監督 新藤兼人






深い洞察(必読)
https://movie.hix05.com/Shindo/shindo02.shukuzu.html

これも優秀レビュー
http://blog.livedoor.jp/basedonfacts/archives/67597837.html




昭和初期、まだ大正の名残りある時代、そこに暮らすある女の生き様。

ある女と言っても、その時代、いや長い目で見て近代になってもなお、いや、はっきり言って今なお、「女」として生きる、この日本という国で「女性」として生きることの苦悩が、二時間を越えるこの作品のなかに凝縮されている。

なんて書き出すと重く苦しく女の半生を描いた作品に思われるかもしれないが、確かに決して軽くはないけれど、女を演じる乙羽信子(当時29歳)の、「そう生きるしかない」腹の括り方が時代を、そして私たちが生きる日本という国を強烈に照らし出しているような気がしてならない。










貧しい長屋の靴職人の家に暮らす乙羽は、20歳を機に奉公に出されることになる。奉公と言っても、芸者。そしてはっきり言ってしまえば、売春を厭わない職業だ。それはすなわち小学生くらいの妹と、さらに幼少の妹を抱える一家の困窮を救うためであり、長女の勤めであり、次女たちが「そんな職業」に進まなくても済むようにするための、乙羽信子の責任感の行使でもある。着物を着せられ、女衒とともに小舟に乗って川を渡り遊郭街へと向かう序盤のシーンが切ない。親も妹たちも、そして何より乙羽自身がやるせない気持ちではち切れそうだ。








現代において、もちろん隠された現実はあれど、義務教育や人権という意識や仕組みがある日常から見ると、あまりにも残酷で。女が、その性によって公然と男たちの「慰みもの」として扱われ、そこに尊厳を与えられずさらに公然と蔑まされている時代。しかし冒頭に書いたように、その根本構造(男尊女卑など)は、豊かなる今の時代でも残っているように思えてならない。だからこの物語を哀れみを持って観るというよりは、日本という国の「縮図」として捉えて観てしまいました。「そうやん、そうゆうこと、今でもあるやん」と。














こうして書くと、筆者(おれのこと)はやけにフェミニストでリベラルぽくて、なんて思われるかもしれないし、それはどうでもいいんですが、あまりにも「女は虐げて当然」という時代感が恐ろしくて。しかしそれが果たして「時代」なのかな?と今と比べて思ったりするのは、繰り返しになりますがそれが日本の、数ある顔のひとつではないかと考えてしまうのです。







晩年の乙羽信子(1924-1994)右:監督で夫の新藤兼人(1912-2012)







乙羽信子、たくましいです。いつご結婚されたのか知りませんが、夫・新藤兼人監督の描く作品の多くに(まだまだ観てない作品が多いのですが)出演し、そこで描かれる女性像にメソメソ泣くような姿はないように感じます。虐げる側の絶対権力に等しい男どもを、時にしたたかに時に大胆に凌駕しています。そう、たくましさでは圧倒的に男性を越えた姿。美しいです、ほんと。

そんな乙羽さん、実家のためにまさに体を張って働きます。が、身請けをしたいという男に再三惚れられたり、惚れたりします。そしてことごとくその「職業」ゆえに、男性側の「家」に蔑まされ破談します。乙羽にとってそれらが真実の愛であったのかどうか?は分かりません。でも結婚すれば、もはや体を売って稼がなくても良いということ、そこに微かな希望や夢を託していたのだろうと。













終盤、女としての夢も希望も潰えたようなころ、次女が病気で余命わずなか状態になります。乙羽さんはいぶかしかる女将・山田五十鈴(言わずもなが名演!)を振り切り実家に戻り、妹を励まし添い寝をします。乙羽にとって唯一残された希望は、自分自身の夢ではなく、自分が働くことによって得られる金で、妹たちが教育を受け、決して芸者・売春婦などという職に就くことなく、立派に成長して欲しいということ。妹はそんな姉の姿に、高熱でうなされながら謝ります。「お姉ちゃん、ごめん」。

しかし乙羽自身も日頃の激務がたたり寝込んでしまいます。しかも妹より重篤になってしまい、今まで散々悪女将っぷりだった山田五十鈴も駆けつけて「ほんとにあんたは立派だった」と、さらに昔の男たちも駆けつけ涙、涙に明け暮れます。






美人すぎないところが良い。(写真は別写真)







数日後、残酷にも妹のほうが死にます。そして乙羽信子が奇跡的に回復します。さっきまで泣いていた山田五十鈴は元の女将の姿に戻って「さあさあお座敷だよ!」と。乙羽も悲しみにいつまでも暮れることなく化粧をし、身支度を整えて戻っていきます。




「そう生きるしかない」




切なく、深く考えさせられる作品でした。









2018年 7月12日
ラピュタ阿佐ヶ谷 ”戦後独立プロ映画の歩みー力強く”にて観賞









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