統一感のとれたマニュアルを通して個の創造性を生み出すしくみがポイント

接客マニュアルを例に挙げると、外食産業のように「いらっしゃいませ」から「おじぎの角度」までこと細かく所作を規定することが一般的に知られています。
しかし、これでは「ありきたり」の声掛け、心がこもらない接客につながることは否定できません。
若者はもちろん中高年のパート社員や中途採用社員のなかには、決められた形を押し付けられることに抵抗感が強いものです。

マニュアルが現場リーダーの感情的支配の裏付けになってしまえば、そこまで言うんだったら「勝手にしたら」「どうせ辞めるし」といった投げやりの気持ちにもつながり、自分が売上を増やすんだという「責任意識」も芽生えてきません。モチベーションの向上どころか、時間内だけ形だけの接客をして時間がくればさっさと帰るという光景もめずらしくありません。

給与や休日など待遇面がよほど優れていないと、特に現場作業にあたる社員やパート社員の定着率は低く、求人募集のための経費が膨らむと同時に「あの会社はいつも募集しているから、きっと人間関係や待遇面で最低な会社なんだろう」とマイナスイメージが定着することにつながります。悪循環に陥ると、良い人材はますます集まらなくなるものです。

 ・マニュアルは「形」や「価値(理念)」の押し付けであってはいけない

組織全体としての理念や目標とともに、個性を尊重しながら個の能力を組織に融合させることによって、お客様に支持され社会的責任を果たせる組織づくりをめざすことが重要です。
(注意点=組織の価値の押し付けや中堅リーダーの感情的な支配に陥らないためには、トップや管理職・中堅リーダーの意識改革にもつながるマニュアルが望ましい)

では、どういうマニュアルを作っていくべきなのでしょうか?

(1)基本テーマと目的
マニュアル編集の基本テーマを「情報編集力を鍛え、高いモチベーションを備えた企画型人材に育てる」としましょう。目的は、商品知識の深堀りとともにライフスタイルをイメージできる創造力を磨き、将来価値を共有することでコンサルティングセールスとコミュニティ構築営業モデルの構築につなげる点にあります。

指示を出す人によって違う具体策を出せば新人は戸惑うばかりです。リーダーの個性を反映させることが基本ですが、オペレーション作業は経験や感性・感情に左右されず、おおよそ同じ手順で作業が進められる標準のフォーマットをマニュアルとして用意しておくと作業がスムーズに進みます。

①潜在能力開発につながるマニュアルは「創意工夫」につながるしくみが必要!
基本テーマに「情報編集力を鍛え・・・」という方向性にすることは、一般的な業務マニュアルとどこが、どう違うのでしょうか。その点について、簡単に触れておきます。
マニュアルには様々なタイプがあります。一般的に分ければ、「業務マニュアル」「取扱い説明書」「研修マニュアル」といった分類ができます。内容は、「ある取り決め」にそって作業や接客の動き、さらに機械の操作を見える化したものです。「組織の統一行動モデル」であり「機械の操作方法を説明する操作手順」です。
つまり、事実を整然とした形で紙面に反映させて押し付けるもので、個人の作業や動きを標準化するものです。

「お辞儀」を例に、「両手をお腹の上で組み、笑顔で45度腰を傾ける」とマニュアル化したとしましょう。基本としては、きちんと標準化され統一したお辞儀ができているときれいです。制服を着用する場合はなおさら、お客様から見ると統一感があって洗練された接客に映ります。

しかし、潜在能力の開発には「自分の意思で、新たな価値を創造する」ようにする必要があります。
そこで、すべての基本となる行動規範である「マニュアル」とともに、個性を反映させた自発的な行動、さらに創意工夫までつながる「しくみ」を用意することが、マニュアルを形骸化させない1つのポイントとなります。
一流のホテルや航空会社の客室乗務員などをイメージすればわかりやすいかもしれません。

・成功体験の定着化こそがマニュアルの本来の目的!
しかし、問題は一般の中小企業や小規模の専門店、あるいは再就職の応募で集まる求職者の多くは一流大学を卒業したごく一部の優れた人たちではなく、普通の人材です。この普通の人材を輝かせることが、中小企業や専門店の1つの重要なテーマであると考えておくべきでしょう。そのためには、押し付けのマニュアルによって窮屈な体制を作るよりも、個性が発揮できる体制を整えておく方が働きやすい職場を作ることにもなります。

では、一定の統一感を維持しながら、個性を発揮できるためのマニュアル+「しくみ」はどう作れば良いのでしょうか。その1つのヒントが、成功体験の定着化です。